主人公ユウタ37歳はIT企業を経営している俗にいう独身貴族。
ある程度美味しいものを知っていると自負していたが前回ダイチから『ユウタ、おまえ、美味しいもの知ってるの?』といわれたことがきっかけで真のお取り寄せ男子になる事を決意したのだった。
今回の舞台は湘南の海。
ダイチの知人が経営しているという海の家でバーベキューをすることになったのだ。
前回の花火鑑賞で一緒になったサキとマイを誘いリア充の巣窟へと繰り出す。
会場となる海の家は飲み物も食べ物も持ち込み自由だ。
ここはイケているお取り寄せを持ち寄りサキに対してアピールをしたい。
だが何を。
ダイチはどうするのだろう。
やつのことだからスペシャルな肉なんかを仕込んでいるに違いない。
『え?肉?持っていかないよ。これだけ暑かったら悪くなりそうじゃん。なんか適当に持っていくさ』
確かに一理ある。
無難ではあるがもっと手堅く女性が喜ぶものにしよう。
ユウタはそう考えた。
そういえば前回もシャンパンは喜んでくれてたな。やっぱり女の子はシャンパン好きだもんな。
そうしてユウタは今回は
を選んだ。
現地には既にサキとマイが到着していた。
水着姿のサキの姿にテンションが上がる。
『わーユウタさん、またセンスのいいシャンパン♪』
よかった。今回も喜んでもらえた。
現地でのバーベキューはダイチの知人が特別に用意してくれた神戸牛や有機野菜にサキもマイも大喜びだ。
お酒もいい感じで入って前回以上に距離感を縮められている気がする。
今度は二人で会いたい。
今の感じならまず誘っても問題ないだろう。
この肉が食べ終わったらさりげなく予定を聞いてみよう。
そんな時だ。マイがおもむろにサキに話かけた。
『なんかラーメンとか麺類食べたくなってきちゃったね笑 お肉ももう終わるから食べて帰らない?』
『そうだね、帰りにお店寄って帰ろうか♪』
ユウタは思わず口に含んでいたビールを吹き出しそうになってしまった。
これはデジャブか。
前回見た光景がまた繰り広げられている。
そんな時だ。ダイチがおもむろにバーベキューグリルの前に立った。
『マイちゃんさ、麺だったら折角だから焼きそば食べない?お取り寄せで最近ハマってる焼きそばがあって今日持ってきてるんだ、よかったらそれ食べてみない?』
ダイチ、肉以外の何か持っていくがまさかの焼きそば。
『えー!焼きそばをお取り寄せするなんてなんか通って感じでかっこいいです!食べたい♡』
マイのリアクション、これも見たことがある。
『愛知の老舗メーカーの大磯屋っていうところの焼きそばなんだよ。すごくこだわってて作られてて麺のコシなんかもすごいんだ。パスタ替わりに使ってもほんと美味しいんだよ愛知では大磯屋やきそばって言ったら超有名!有名人にもファンが多いんだ』
『桜えびもすごく映える!美味しそう♡頂きます』
今回も女性陣の食い付きがすごい。
『超美味しい!このモチモチ感がすごい!ねえサキ、すごく美味しいね!』
『ほんと!すごく美味しい!この特製ソースともすごく馴染んで美味しいです♡大磯屋やきそば!おうちでもお取り寄せします!ダイチさんすごい!』
今回もダイチのファインプレーにより女性陣の早期離脱は免れたがサキをデートに誘うどころではなくなってしまった。
たかが焼きそば、されど焼きそば。
焼きそばを制する者は夏を制す。
ユウタの心の中に強く刻まれた。
こうしてユウタは再度お取り寄せ男子となる事を心に誓ったのだった。